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 ピンク色をしたキャンドルにともる灯がゆらりと揺れた。
 それをぼんやりと眺めながらロードはひとつため息をつく。
 クリクマスイブということで今夜の晩餐はいつにもまして豪華だった。
 この日、キャメロット家の晩餐に千年伯爵が招待されるのは毎年のことだ。そして夜が更ける前にロードは伯爵の手をひいて自室にひっこむ。
 今日はイブだからサンタクロースが来てくれるわ。千年公をあまり困らせずに早く寝るのよ。微笑むトリシアにロードはうん、と笑顔で返す。
 優しい母親は知らない。
 この日、ロードが眠ることはないということ。
 毎年、伯爵がひどくうなされること。
 夜明けまで、小さなキャンドルの灯が部屋のたったひとつの光源となる。

 つう、と頬を流れた涙をぬぐってやる。
 眉間のしわはとれている。先ほどとは違う夢を見ているのだろうか。
 夢に干渉することはできる。けれどロードはそれをしようとしない。夜が明けるまで汗や涙をぬぐうだけ。
 ふと気づくと窓の外がわずかに明るくなってきた。完全に太陽が顔を出せば、伯爵は何事もなかったかのように笑うのだろう。
 窓を開ける。ぴりっと冷たい冬の空気が流れ込んできた。
 キャンドルの小さな灯が消える。

「ハッピーバースデイ、アレン」

 頬杖をついて薄暗い空を眺めていると、鼻先を何かがかすめた。
 雪、だ。
 伯爵が身じろぎしたのが見えて、窓を閉めた。
 まもなくホワイトクリスマスになるだろう。

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