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 職業柄今まで数えるのも馬鹿らしいほど奇怪というものに遭遇してきたけれど。
 アレンはもう一度目をこすって、ある人物を凝視した。

 同僚の頭にウサ耳が生えていた場合、どう反応すればいいんだろう。

「おかえりなさいアレンくん」
「ただいまリナリー。ところであれはなんですか」
「ラビだけど?」
「いやラビじゃなくて、その頭に生えているもの」
 もしかしてあれはリナリーには見えていないのかもしれない。僕が疲れているだけかも。そうだったらどれだけよかっただろう。
 アレンの思いもむなしく、リナリーはポンと手を打った。
「ちょっと不幸な事故で・・・」

 さかのぼること半日前、ラビは後の災難も知らずに科学班へ呼ばれていった。
 ラビの知識というデータバンクのすごさはアレンも知っている。今回もそのことで力を貸すはずだった。何の変哲もない出来事だった。
 けれどめまいを起こして倒れたジョニーを助けようとしてラビは棚にぶつかり、科学班作の薬が棚からラビの頭をめがけて落ちてきた。
 そして今にいたる。
「それでウサ耳・・・」
「棚に無造作に置いておいた薬だから無害とわかっていたけど、リーバー班長はしきりに謝っていて」
「でも解毒剤か何かあるんですよね?」
「一日で効果はなくなるみたい。ブックマンは髪が残ってよかったな、って」
 そういえばブックマンもウサ耳の被害にあったことがあった。
 話しながらラビのほうへ近づいていくと、ラビの明るい髪の間から天に向かって伸びる長い耳がピクッと動いた。
「アレン、帰ってきたんさね。ホクロふたつも」
「はい。ラビは災難だったね」
 アレンがいうとラビはあからさまに落ち込んだ。同時にウサ耳も垂れる。
 あ、かわいい。アレンとリナリーは同じことを思って、でも口にしないであげた。
「リナリー、室長がー!」
「はーい! まったく、兄さんってば!
 ・・・本当にごめんねラビ。大丈夫、変じゃないよ」
 似合ってる、と言わなかったのはリナリーの優しさか。
 リナリーは慌しく科学班へ駆けていった。
 ラビは男として情けなくなったのかしょげてしまっている。
 アレンはどうフォローしようか考えて、困って後ろに控えているリンクを見ると、リンクもなんともいえない顔をしている。
 とりあえず頭を撫でてあげることにした。
「よしよし」
「・・・アレンさ、最近オレのことお兄さんって思ってないだろ」
「えーそんなことないですよー」
 ラビの不服そうな言葉や表情と裏腹に、ピクピク動く長い耳。
 柔らかな毛で覆われた耳に衝動的に手を伸ばした。
 ふに。
「うわっ」
 ラビの驚く声を聞きながら、かまわずアレンは耳を弄くる。ほわほわな毛と、不思議な温度の感触。
 ラビは背が高いから手を伸ばして。なかなか気持ちいい手触りになんだか和んだ。
「アレン?」
「なんか和む・・・」
「それ褒め言葉? なんか微妙なんだけど」
「もうラビ、全身ウサギになっちゃえばよかったのに」
「ええっ」
 あたふたするラビを横目で見ながら、ふにふに、耳を撫でる。
 ウサ耳が消えるまで、後半日。
 またときどきなってみてくださいね!と笑顔で言われたラビが悩むのも、半日が過ぎたころのこと。


* * * * *
 王道を書こう!と思い至ったらこんな話に。王道? 科学班の薬で~、は王道と言えなくもないですが。
 アレンが久しぶりに子供らしい全開の笑顔で頼んできたのでラビは断わりきれなかったみたいです。
 それにしてもリンクの空気っぷりが異常・・・。
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