基本はネタ帳。
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ざわざわと風に身を任せる木々の声。そしてその間から漏れてくる白い光に呼ばれて、アレンは目を覚ました。
木々に四方を囲まれてアレンは地に伏していた。身体を起こそうとすれば、背骨などあちこちが小さく傷みだす。
どうしてこんなことになっているのだろう、と記憶を辿る。
「・・・ティム、いる?」
小さく呼べば小さな相棒はすぐにアレンを見つけてやってきた。ティムもアレンを探していたのか、心配したと訴えるようにその丸い体をぐりぐりとアレンの額に押しつけてきた。
「痛た・・・。ティムってば、痛いよ」
額を袖口で拭えば、薄く切れていたらしくピリッとした痛みが走る。団服は流石と言うべきか、小さなほつれや葉っぱはあちこちについていたけれど、しっかりと持ち主の身体を守っていた。
唐突に、思い出した。
「そっか、僕、落ちたんだっけ」
崖から、この森へ。
連携していつまでたっても攻撃らしい攻撃もせずに動き回るアクマたちをおかしいと思わないでもなかったけれど、気がついたら崖に体よく誘導されていた。
アクマに囲まれて、逃げ場なんて無くて、逃げる気も無かった。
ただ、運の悪いことに崖はアクマの攻撃に耐えられなかったのだ。
アクマが撃った弾を避けて、ちょこまかと動き回る哀しい兵器を開放してあげようと動きをうかがう。
アレンの髪を数ミリ散らした弾は、続いてアレンの足元を狙ってきた。
アレンはイノセンスをエッヂに変えて、弾を撃った直後の一瞬の隙をとらえて魂を開放しようとした。
着地した衝撃で崖が崩れ始めても、アレンは空を見ていた。
レベル1が数体とレベル2が二体。開放した魂はどこかへと消える。それが常。
ただ一つ、魂は消える瞬間にその声なき声でアレンに囁いた。
慰めとも叱咤ともとれるその言の葉。
気がついたときには身体は宙に放り出されていてクラウンベルトを伸ばしても、もう遅かった。
「よく、助かったなあ・・・」
教団支給の個人にあった団服がだいたいの衝撃を受け止めてくれるとはいえ、木々の中に突っ込んでたいした怪我も無く、運が良かったと思う。
あとで、またリンクやコムイに怒られてしまうかもしれない。
「そりゃ、リタイアはできないからねぇ」
突如返ってきた声にアレンは銀灰色の目を見開いた。
少女はいつのまにかアレンの傍に佇んでいた。
「無事でよかったねぇ。それとも、逝きそこねて残念だったねって言えばいい?」
「あいにく死ぬ気は無いので、ありがとうとだけ言っておきます」
「ふふ、どういたしましてぇ」
「・・・相変わらず神出鬼没だね、ロード」
「アレンが呼ぶからね」
「呼んでないよ?」
「嘘。呼んでたよぉ」
身体を起こしていても、地面に座り込むアレンはどうしてもロードを見上げる形になる。
光源の少ない森の中。佇むロードの表情は逆光で陰っている。
自然な動きでロードはアレンの顔に出来た小さな擦り傷のひとつに触れた。
触れた指先の温度は、アレンよりも少しだけ温かかった。
「羨ましかった?」
まったくもって真意の読めない言葉に、アレンは黙ってロードを見つめる。
「タマシイ。笑ってたんでしょ?」
思わず目を見張る。
ロードにとってのアクマは数ある玩具だ。どうやったってアレンのアクマを想う気持ちは理解できない。
脳裏に浮かんだのは、囚われた魂があるべき場所に還る前にアレンに残した言の葉。
「ううん。僕はまだやることがあるから」
開放は望んでいない。
それは本心で、少しだけ強がりだった。
「ロードこそ、羨ましいんじゃない?」
ちょっとした交ぜっ返しのつもりでアレンが返すと、ロードはそうかもねと笑った。
ぽかんとするアレンに構わず、小さな唇はゆっくりと紡ぐ。
「ボクらに、リタイアは許されていないんだ」
それが寂しそうに聞こえて、アレンは左手を伸ばした。
ティムはさっきからずっとピクリとも動かない。息を潜めて成り行きを見ている。
「僕らは、――」
――これから貴方を待ち受ける脅威に対して、私は祈ることしか出来ない。
背を預けられる人がいるのなら、その背を伸ばして、立ち向かって。
生き抜いてください。無責任だけれど、貴方にはそれができるのだから。
脅威と言われて思い浮かべるものなんて、とても片手では足りそうに無い。
それでも、やることは決まっている。
今出来る精一杯を。それがすべて。
「――僕らは生きているから」
ノアが憎むイノセンスの左手がロードに触れた。
「うん」
傷一つ無い浅黒い肌は、それを拒むことはしなかった。
その先は、二人とも言葉にしない。
ただ、物言わぬ金色のゴーレムだけが、その羽音を響かせた。
耳障りな砂嵐を何度か鳴らせて、イヤリング型の通信機が反応する。
それは終わりを告げる合図。
非日常から日常へ戻る鐘の音。
「・・・・・はい、アレンです」
『ウォーカー、いったいどこにいるんですか』
「えっと崖から落ちちゃって」
『崖!? どこか怪我は・・・』
答えようと口を開くと、その口が塞がれた。
一瞬の出来事。
唇に残る何かに触れた感触。思わずアレンが口元に手を当てたときには、少女の姿はどこにもなかった。
「・・・・・・・・!」
『ウォーカーどうしました? ウォーカー?』
通信機からは返事をせかすリンクの声。
息を吸って、吐いて、深呼吸。そうしてようやっと口を開く。
しばらくしてリンクがやってくるとのことで通信は切れた。
沈黙を守るティムをそっと見やる。
さっきまでの夢のような出来事は、まだアレンの中で鮮やかに残っている。
「羨ましかった?」
「・・・ううん。そんなことないよ」
だって誓った。大好きな養父にも。心の底では敬愛していた師にも。
精一杯生きることは難しいかもしれないけれど、やり遂げてみせると。
「行こうか、ティム。そろそろリンクが迎えに来る」
柔らかな木漏れ日を受けて、ティムは一度羽ばたいた。
天国は有料でさらに僕らは規定年齢にも達してないから
* * * * *
(お題元:h a z y)
久々の話。もはやリハビリ?
このあともだらだらと続くんですけど、終わらないのでばっさりカットしてしまいました。
ローアレが足りません。こんなんで冬眠できるかな・・・?
木々に四方を囲まれてアレンは地に伏していた。身体を起こそうとすれば、背骨などあちこちが小さく傷みだす。
どうしてこんなことになっているのだろう、と記憶を辿る。
「・・・ティム、いる?」
小さく呼べば小さな相棒はすぐにアレンを見つけてやってきた。ティムもアレンを探していたのか、心配したと訴えるようにその丸い体をぐりぐりとアレンの額に押しつけてきた。
「痛た・・・。ティムってば、痛いよ」
額を袖口で拭えば、薄く切れていたらしくピリッとした痛みが走る。団服は流石と言うべきか、小さなほつれや葉っぱはあちこちについていたけれど、しっかりと持ち主の身体を守っていた。
唐突に、思い出した。
「そっか、僕、落ちたんだっけ」
崖から、この森へ。
連携していつまでたっても攻撃らしい攻撃もせずに動き回るアクマたちをおかしいと思わないでもなかったけれど、気がついたら崖に体よく誘導されていた。
アクマに囲まれて、逃げ場なんて無くて、逃げる気も無かった。
ただ、運の悪いことに崖はアクマの攻撃に耐えられなかったのだ。
アクマが撃った弾を避けて、ちょこまかと動き回る哀しい兵器を開放してあげようと動きをうかがう。
アレンの髪を数ミリ散らした弾は、続いてアレンの足元を狙ってきた。
アレンはイノセンスをエッヂに変えて、弾を撃った直後の一瞬の隙をとらえて魂を開放しようとした。
着地した衝撃で崖が崩れ始めても、アレンは空を見ていた。
レベル1が数体とレベル2が二体。開放した魂はどこかへと消える。それが常。
ただ一つ、魂は消える瞬間にその声なき声でアレンに囁いた。
慰めとも叱咤ともとれるその言の葉。
気がついたときには身体は宙に放り出されていてクラウンベルトを伸ばしても、もう遅かった。
「よく、助かったなあ・・・」
教団支給の個人にあった団服がだいたいの衝撃を受け止めてくれるとはいえ、木々の中に突っ込んでたいした怪我も無く、運が良かったと思う。
あとで、またリンクやコムイに怒られてしまうかもしれない。
「そりゃ、リタイアはできないからねぇ」
突如返ってきた声にアレンは銀灰色の目を見開いた。
少女はいつのまにかアレンの傍に佇んでいた。
「無事でよかったねぇ。それとも、逝きそこねて残念だったねって言えばいい?」
「あいにく死ぬ気は無いので、ありがとうとだけ言っておきます」
「ふふ、どういたしましてぇ」
「・・・相変わらず神出鬼没だね、ロード」
「アレンが呼ぶからね」
「呼んでないよ?」
「嘘。呼んでたよぉ」
身体を起こしていても、地面に座り込むアレンはどうしてもロードを見上げる形になる。
光源の少ない森の中。佇むロードの表情は逆光で陰っている。
自然な動きでロードはアレンの顔に出来た小さな擦り傷のひとつに触れた。
触れた指先の温度は、アレンよりも少しだけ温かかった。
「羨ましかった?」
まったくもって真意の読めない言葉に、アレンは黙ってロードを見つめる。
「タマシイ。笑ってたんでしょ?」
思わず目を見張る。
ロードにとってのアクマは数ある玩具だ。どうやったってアレンのアクマを想う気持ちは理解できない。
脳裏に浮かんだのは、囚われた魂があるべき場所に還る前にアレンに残した言の葉。
「ううん。僕はまだやることがあるから」
開放は望んでいない。
それは本心で、少しだけ強がりだった。
「ロードこそ、羨ましいんじゃない?」
ちょっとした交ぜっ返しのつもりでアレンが返すと、ロードはそうかもねと笑った。
ぽかんとするアレンに構わず、小さな唇はゆっくりと紡ぐ。
「ボクらに、リタイアは許されていないんだ」
それが寂しそうに聞こえて、アレンは左手を伸ばした。
ティムはさっきからずっとピクリとも動かない。息を潜めて成り行きを見ている。
「僕らは、――」
――これから貴方を待ち受ける脅威に対して、私は祈ることしか出来ない。
背を預けられる人がいるのなら、その背を伸ばして、立ち向かって。
生き抜いてください。無責任だけれど、貴方にはそれができるのだから。
脅威と言われて思い浮かべるものなんて、とても片手では足りそうに無い。
それでも、やることは決まっている。
今出来る精一杯を。それがすべて。
「――僕らは生きているから」
ノアが憎むイノセンスの左手がロードに触れた。
「うん」
傷一つ無い浅黒い肌は、それを拒むことはしなかった。
その先は、二人とも言葉にしない。
ただ、物言わぬ金色のゴーレムだけが、その羽音を響かせた。
耳障りな砂嵐を何度か鳴らせて、イヤリング型の通信機が反応する。
それは終わりを告げる合図。
非日常から日常へ戻る鐘の音。
「・・・・・はい、アレンです」
『ウォーカー、いったいどこにいるんですか』
「えっと崖から落ちちゃって」
『崖!? どこか怪我は・・・』
答えようと口を開くと、その口が塞がれた。
一瞬の出来事。
唇に残る何かに触れた感触。思わずアレンが口元に手を当てたときには、少女の姿はどこにもなかった。
「・・・・・・・・!」
『ウォーカーどうしました? ウォーカー?』
通信機からは返事をせかすリンクの声。
息を吸って、吐いて、深呼吸。そうしてようやっと口を開く。
しばらくしてリンクがやってくるとのことで通信は切れた。
沈黙を守るティムをそっと見やる。
さっきまでの夢のような出来事は、まだアレンの中で鮮やかに残っている。
「羨ましかった?」
「・・・ううん。そんなことないよ」
だって誓った。大好きな養父にも。心の底では敬愛していた師にも。
精一杯生きることは難しいかもしれないけれど、やり遂げてみせると。
「行こうか、ティム。そろそろリンクが迎えに来る」
柔らかな木漏れ日を受けて、ティムは一度羽ばたいた。
天国は有料でさらに僕らは規定年齢にも達してないから
* * * * *
(お題元:h a z y)
久々の話。もはやリハビリ?
このあともだらだらと続くんですけど、終わらないのでばっさりカットしてしまいました。
ローアレが足りません。こんなんで冬眠できるかな・・・?
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