基本はネタ帳。
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微ネタバレ&捏造注意。
ノアの襲撃はエクソシストおよび黒の教団、ひいては中央庁にまで大きな爪痕を残して去った。
失った命は計り知れず、代償も大きい。
そんな中でアレンは生き残った命として、ゲートを繋ぎ積極的に任務に赴いていった。
また、助けられなかった。そんな自責の念がアレンを戦場へ駆り立てる。
前へ。ひたすらに前へ。
目の下にうっすらとクマを作りながら精力的に働くアレンに、見知った仲間たちは一様に心配そうな顔をし忠告をしたけれど、アレンは知らないフリをした。
「―――哀れなアクマに魂の救済を」
大量の寄る辺を失った魂たちを解放し、今や見る影もない廃墟の中心でアレンは祈る。
退避していたリンクへは先ほど無線で戦いの終わりとこの場所を告げた。もう間も無くやってくるだろう。
左目に感知するアクマはいない。それをもう一度確認して発動を解く。
アレンの横を通り抜けるだけの風の中に、よく知る声が混じる。
視界の端に色彩の薄いこの景色の中で陽の光を浴びて輝く金の髪をとらえる。もの言いたげな彼に無事ですよと伝えようとして身体をひねり、一歩踏み出した。
ここまでは覚えている。
戦闘後の緊張が解けたことがいけなかったのだろうか。金色をした相棒と慌てたような羽音と、リンクの声を最後にアレンの記憶はここで途絶えた。
目を開いたら四角くて白い天井。太陽は見えない。
背中に確かに感じた堅い地面は、いつのまにかこれまた白くて柔らかいベッドへと変わっている。
身体を起こせば酷い頭痛がした。
アレンは続いて右腕に刺さっている管を見て、思わず引き抜こうとした。
「何をやっているのですか!」
「あ、リンク」
あ、じゃないですよ!、とリンクが声を荒らげる。タイミング悪く(リンクにしてみればタイミングよく)部屋に入ってきた彼はリンゴやら何やらの果物をいっぱいに抱えて、ずかずかと歩み寄ってきた。
ちょうどいいとばかりにアレンは口を開き、言の葉を紡ぎだす前にリンクが先に答える。
「倒れたんです。任務終了後、そのまま。医師が言うには軽度の過労と寝不足、それに栄養失調」
「・・・・・・・」
「あなたが身体を酷く酷使しているのは知っていました。それを黙認していた私の責任でもある。ウォーカー、わかっているのか?」
「何を、ですか?」
「あなたの精神が磨り減り、意識が弱くなればその分14番目につけこまれる可能性も高くなるのだと」
アレンの表情がわずかに強張る。
アレン・ウォーカーの身体には危険な種が宿っている。深く根をはり、いずれアレンの意識を侵食してしまうと言われる、それ。実際に今まで顔を出してきたこともあった。
もうこの身体すら完全にアレンのものであるとは言えないのだ。
「リンク、ぼく」
「14番目の兆候はありませんでした。これで満足ですか? さあベッドに横になる!」
アレンが息をほっと吐き出すと、このごろ更に世話焼きになった気がする監査官はアレンをベッドに押し戻し、布団をかけた。
ちょうどそこで白い服を着た看護士がやってきた。知らない顔だと思い、ここが教団の医務室でないことによくやく気付く。アレンはさっと顔色を変えた。
予想に反して看護士はアレンに声をかけると手際よく検分し、カルテに何事かを書き込んでいた。もしも、この看護士が自分を担当しているのだとしたら左手に気付かないわけがない。アレンがじっと看護士を見ていると、視線に気付いた看護士は、ああ、と笑った。
「右腕。点滴、ごめんなさいね?動きにくいでしょう。でも左腕じゃどうも血管を捕らえられなくて。私もまだまだだなー」
看護士は能天気にそんなことを言った後、過労と睡眠不足、栄養失調の怖さについて真面目な調子で説いた。
そして彼女が部屋を出ると、リンクはようやく口を開いた。
「そういうわけで君には1日ほど入院していただきます」
「僕はもう大丈夫ですよ?」
「室長命令です。ここではすることもないのだから身体をしっかり休めるように」
「・・・・はい」
しぶしぶと頷く。2日でなくてよかった、と思うことにした。
ティムキャンピーは何故か見当たらず、することもない。
アレンは右腕に繋がる点滴を追った。
ぽつん、ぽつん、と一定のリズムを持って落ちる雫。
普段のアレンの食事量と比べればあまりにもわずかな量。それがゆるやかな速度で内側へと入り込み、アレンを動かす助けとなっている。
ほんのわずかな支え。けれど止むことはない。
身体を完全にベッドへ預け、深呼吸してみた。
リンクへと目をやれば、彼は袋の中から真っ赤に熟れた艶々のリンゴと果物ナイフを取り出しているところだった。
じっと見ているとリンクはすぐに気付く。
「何か?」
「うん。ねえリンク、」
今、君が監視でよかったなって思ったよ。
リンクは何も言わなかった。
するすると鮮やかな手つきで皮をむく。アレンはそれをおかしそうに見ていた。
むき終わったリンゴが手渡され、瑞々しいそれに歯を立てる。
生きているんだ、と唐突に思った。
開いた窓から入ってくる風が白くてやわらかなカーテンを揺らす。
蜜をたっぷり含んだ果実を咀嚼し、もう一度思う。
「リンク、お腹すいた」
「果物しかありませんよ。あとは病院食で我慢なさい」
「うん。ね、次はうさぎリンゴがいいです」
「子供ですか」
けれどもう一つリンゴを手に取ったところを見ればリクエストに応えてくれるつもりなのだろう。
くすくすと笑って、静かに目を閉じる。
目を閉じれば、この白い病室に不釣合いなほどに強い命の音が聞こえてきた。
* * * * *
テーマは「点滴」。どこがだよと私がつっこみたいくらいです。
なんだか書きたくなって書いたらまとまりがなくなってしまいました。
途中で調べてみたところ、点滴では水分補給が主で栄養はほとんど取れないそうです。ジュース1本分程度。致命的なミスですね!(いまさら直す気はない)
何かを書くたびに試験に出ない知識が増えていきます。
ノアの襲撃はエクソシストおよび黒の教団、ひいては中央庁にまで大きな爪痕を残して去った。
失った命は計り知れず、代償も大きい。
そんな中でアレンは生き残った命として、ゲートを繋ぎ積極的に任務に赴いていった。
また、助けられなかった。そんな自責の念がアレンを戦場へ駆り立てる。
前へ。ひたすらに前へ。
目の下にうっすらとクマを作りながら精力的に働くアレンに、見知った仲間たちは一様に心配そうな顔をし忠告をしたけれど、アレンは知らないフリをした。
「―――哀れなアクマに魂の救済を」
大量の寄る辺を失った魂たちを解放し、今や見る影もない廃墟の中心でアレンは祈る。
退避していたリンクへは先ほど無線で戦いの終わりとこの場所を告げた。もう間も無くやってくるだろう。
左目に感知するアクマはいない。それをもう一度確認して発動を解く。
アレンの横を通り抜けるだけの風の中に、よく知る声が混じる。
視界の端に色彩の薄いこの景色の中で陽の光を浴びて輝く金の髪をとらえる。もの言いたげな彼に無事ですよと伝えようとして身体をひねり、一歩踏み出した。
ここまでは覚えている。
戦闘後の緊張が解けたことがいけなかったのだろうか。金色をした相棒と慌てたような羽音と、リンクの声を最後にアレンの記憶はここで途絶えた。
目を開いたら四角くて白い天井。太陽は見えない。
背中に確かに感じた堅い地面は、いつのまにかこれまた白くて柔らかいベッドへと変わっている。
身体を起こせば酷い頭痛がした。
アレンは続いて右腕に刺さっている管を見て、思わず引き抜こうとした。
「何をやっているのですか!」
「あ、リンク」
あ、じゃないですよ!、とリンクが声を荒らげる。タイミング悪く(リンクにしてみればタイミングよく)部屋に入ってきた彼はリンゴやら何やらの果物をいっぱいに抱えて、ずかずかと歩み寄ってきた。
ちょうどいいとばかりにアレンは口を開き、言の葉を紡ぎだす前にリンクが先に答える。
「倒れたんです。任務終了後、そのまま。医師が言うには軽度の過労と寝不足、それに栄養失調」
「・・・・・・・」
「あなたが身体を酷く酷使しているのは知っていました。それを黙認していた私の責任でもある。ウォーカー、わかっているのか?」
「何を、ですか?」
「あなたの精神が磨り減り、意識が弱くなればその分14番目につけこまれる可能性も高くなるのだと」
アレンの表情がわずかに強張る。
アレン・ウォーカーの身体には危険な種が宿っている。深く根をはり、いずれアレンの意識を侵食してしまうと言われる、それ。実際に今まで顔を出してきたこともあった。
もうこの身体すら完全にアレンのものであるとは言えないのだ。
「リンク、ぼく」
「14番目の兆候はありませんでした。これで満足ですか? さあベッドに横になる!」
アレンが息をほっと吐き出すと、このごろ更に世話焼きになった気がする監査官はアレンをベッドに押し戻し、布団をかけた。
ちょうどそこで白い服を着た看護士がやってきた。知らない顔だと思い、ここが教団の医務室でないことによくやく気付く。アレンはさっと顔色を変えた。
予想に反して看護士はアレンに声をかけると手際よく検分し、カルテに何事かを書き込んでいた。もしも、この看護士が自分を担当しているのだとしたら左手に気付かないわけがない。アレンがじっと看護士を見ていると、視線に気付いた看護士は、ああ、と笑った。
「右腕。点滴、ごめんなさいね?動きにくいでしょう。でも左腕じゃどうも血管を捕らえられなくて。私もまだまだだなー」
看護士は能天気にそんなことを言った後、過労と睡眠不足、栄養失調の怖さについて真面目な調子で説いた。
そして彼女が部屋を出ると、リンクはようやく口を開いた。
「そういうわけで君には1日ほど入院していただきます」
「僕はもう大丈夫ですよ?」
「室長命令です。ここではすることもないのだから身体をしっかり休めるように」
「・・・・はい」
しぶしぶと頷く。2日でなくてよかった、と思うことにした。
ティムキャンピーは何故か見当たらず、することもない。
アレンは右腕に繋がる点滴を追った。
ぽつん、ぽつん、と一定のリズムを持って落ちる雫。
普段のアレンの食事量と比べればあまりにもわずかな量。それがゆるやかな速度で内側へと入り込み、アレンを動かす助けとなっている。
ほんのわずかな支え。けれど止むことはない。
身体を完全にベッドへ預け、深呼吸してみた。
リンクへと目をやれば、彼は袋の中から真っ赤に熟れた艶々のリンゴと果物ナイフを取り出しているところだった。
じっと見ているとリンクはすぐに気付く。
「何か?」
「うん。ねえリンク、」
今、君が監視でよかったなって思ったよ。
リンクは何も言わなかった。
するすると鮮やかな手つきで皮をむく。アレンはそれをおかしそうに見ていた。
むき終わったリンゴが手渡され、瑞々しいそれに歯を立てる。
生きているんだ、と唐突に思った。
開いた窓から入ってくる風が白くてやわらかなカーテンを揺らす。
蜜をたっぷり含んだ果実を咀嚼し、もう一度思う。
「リンク、お腹すいた」
「果物しかありませんよ。あとは病院食で我慢なさい」
「うん。ね、次はうさぎリンゴがいいです」
「子供ですか」
けれどもう一つリンゴを手に取ったところを見ればリクエストに応えてくれるつもりなのだろう。
くすくすと笑って、静かに目を閉じる。
目を閉じれば、この白い病室に不釣合いなほどに強い命の音が聞こえてきた。
* * * * *
テーマは「点滴」。どこがだよと私がつっこみたいくらいです。
なんだか書きたくなって書いたらまとまりがなくなってしまいました。
途中で調べてみたところ、点滴では水分補給が主で栄養はほとんど取れないそうです。ジュース1本分程度。致命的なミスですね!(いまさら直す気はない)
何かを書くたびに試験に出ない知識が増えていきます。
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