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 魂を無事送り届け、アレンは上司と連絡を取る。左耳にかけられたイヤリングから聞こえてくる能天気な声。
 その声を聞いて初めて知らず知らずのうちに詰めていた息を吐き出した。
 ティムキャンピーが気づかう素振りを見せたので、大丈夫、と声にせずに伝える。
「・・・・疲れたかい?」
「あ、いえ大丈夫です。次のリストがあったら送ってください」
「駄目だよ無理しちゃ! アレンくんはすぐに無茶するんだから」
「あはは・・・」
 怒ったような上司の口ぶりにアレンはどこか乾いた笑いをもらす。
 この仕事は精神力をすり減らすのだ。特にアレンはすぐに根を詰めるから、上司であるコムイとしては困ったものだ。
「とにかくアレンくんは休むこと。リストはまだたまってないから数日の間は『人間生活』を楽しんで」
 ティムはアレンくんをしっかり見張っててね、と続けられた言葉に優秀な相棒は任せろとばかりに羽を大きくはためかせる。
 信用ないなぁと、苦笑するとコムイからもう一度念押しされた。
「それと、もしそっちでクロスを見かけたら教えてくれる?」
「・・・師匠、また失踪したんですか」
「こっちはいつでも人手不足で年中無休なのに困ったものだよね。まったくアレンくんとは正反対なんだから」
「わかりました探しておきます。・・・本当に、その、休暇なんてとっていいんですか」
「『死神』はなにもアレンとクロスだけじゃないよ? それに疲労のせいで魂が正しく還れないなんてことがあったらそれこそ一大事だ」
「そう、ですね。わかりました。でもコムイさん、」
「うん?」
「コムイさんも、無理しないでくださいね」
「・・・・ありがとう」
 プツン、とそこで通信は切れた。
 大きく伸びをするとそれまで忘れられてきた疲労が一気に押し寄せてくる。
「とりあえずは寝る場所を確保しなくちゃね、ティム」
 目立つ白髪を隠すようにコートについた黒いフードをかぶり歩き出す。
 すでに陽は傾き、町を往く人々を淡く染め出していた。
 かあかあとカラスが鳴き、子供たちは家路へと駆けていく。
 その様子をアレンはしばし眩しそうに眺めていた。
 同時にそんなどこにでもある平穏を壊すような喧騒が耳に入ってきた。
 音の発生源である路地裏を覗けば、そこではおおかた予想通りケンカがおこなわれていた。
 違ったのは、いかにも血気盛んそうな似たり寄ったりな服装の若者たちに対して、対峙しているのは長い髪を高い位置で結わえた青年一人だったこと。
 いわゆるリンチ、ではなく青年は圧倒的な強さで相手をのしていく。
 それでもやはり多勢に無勢。青年が数人を相手にしている隙に背後を狙われる。
「危ない!」
 とっさにアレンは大剣を出現させ、勢いをつけて振り下ろし小さな突風を作り出した。
「ごめんなさい!」
 アレンの大剣は普段魂を送るときに肉体と離す手段として人の未練を裁つもの。
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