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※「宇宙魚顚末記」とのダブルパロです。
突如現れた魚はイノセンスによるものでもノアが作り出したものでもない。
それは、対処法がまったくわからないということ。
伯爵側が原因ならば、相反するイノセンスがそれを相殺することも可能。逆にイノセンスの起こした奇怪なら、原因をつきとめイノセンスの保護。やることははっきりしている。
けれどそうでないならお手上げだ。どんなに強いチェスの駒だとしてもオセロをひっくり返すことが出来ないように、そもそもの土俵が違う。
チェスもオセロも左右することが出来るのは駒ではなくプレイヤー、つまり神様だけ。
魚が現れて2週間。
手がかりはいまだ見つからず、魚は相変わらずゆっくりと確実にこの世界に向かって泳いでいた。
「ありゃグッピーさね」
「グッピー?」
教団の屋上で空を見上げながらアレンが問い返すとラビはあの魚の種類だと教えてくれた。
魚の種類が断定できるほど近くに事態は迫っている。だというのに2人はのんびりしたものだった。
「グッピーか。なんだかちっとも怖くない名前だな。あれ?名前がわかるってことは地球の魚なんですか? 宇宙を渡り歩く怪魚とかじゃなくて」
「あれがグッピーなら確実に地球産さ。もっとも普通は5cmくらいの熱帯魚で、間違っても巨大化して宇宙を泳いだりしないけどな。グッピーはけっこう人間に品種とか弄られてるから、間違いなく何かの影響で地球のグッピーがあんなことになってんだろ」
「その影響がわかればなあ。それにしても皮肉ですね。人間の勝手で振り回されてきた小さくて無力な魚が、地球を飲み込んで世界を終らせちゃうんだ」
「あいつ地球にぶつかるんじゃなくて飲み込むのか?」
「飲み込むよ。ぱくんってね。なんでだか、そんな気がするんです」
アレンの中でそれは確信。ラビはふうんとだけ言った。
魚は――グッピーは人間たちが騒ごうが何をしようが関係ないとばかりにその体でゆうゆうと泳ぐ。
見えるはずもないのに、ふいにその尾びれがゆっくりと揺れたと感じた。
「ラビ、アレンくん、こんなところにいた。ゴーレムにはちゃんと出てよね。エクソシスト緊急集合だよ」
リナリーが二人に声をかけた。
あちこち探し回ったのだろう。その足は彼女の俊足を誇るイノセンスが発動された状態で、途端にアレンは申し訳なく思った。
「ほら、行こう」
リナリーは探し回らせた恨み言なんて言わずに綺麗に笑った。
リナリーが案内した先は司令室ではなかった。
向かう先は大聖堂。不思議とすれ違う団員はいつもよりも少ない。それも総合管理班や医療班がほとんど。
理由はすぐにわかった。辿りついた大聖堂にはエクソシストや探索部隊など教団に属する団員のほとんどがすでに集まっていた。人ごみでごった返す中、アレンとラビに気付いたクロウリーが手を振った。
「すごい人さねー・・・」
「急に団員を集めて、何をするんだろう」
「まだ私たちにもわからないの。ほら、エクソシストはあっち。早く行こう」
「早く行こうったって、こんなに人が多くちゃ無理さ」
「平気平気。だって、」
話し声に気がついた団員がエクソシストのためにさっと道を開けた。
それはどんどん広がっていって、さながらモーゼの十戒のようにアレンたちの前には道が出来た。
いつも以上の特別待遇。アレンたちはお礼を言いながらその道を駆ける。
「ねえリナリー、本当に何が起こっているの?」
「・・・・・正式には知らされてないけどね、だいたい予想はつくわ」
あの空に浮かぶ魚よ、とリナリーは言う。
「何か進展あったんさ?」
エクソシストに割り当てられた場所に着いた。
アレンとラビに気づいたコムイが、これで全員だねと呟く。
「アレンくん、リナリー、ラビ。悪いんだけど方舟に来てくれるかい。なるべくこっそりと」
「僕たちだけですか」
「うん。君たちだけだ。混乱を避けるためにも、ね」
どういうことかと真意を問う前にコムイはルベリエに呼び出されていった。
アレンたちはしばし顔を見合わせた。
「やっと来たな。久しぶり、少年。眼帯君とお嬢さんも」
「すみません、部屋を間違えたようです」
ガチャ。思わず扉を開けて固まった。
思わずそのまま閉めてしまう。
何せ部屋にいたのはティキ―――敵対するノアの一族だったのだから。
方舟に行くと扉の一つに張り紙がしてあった。
方舟のどこに行けばいいかは聞かされていなかったから、ここだろうとその扉を開けて・・・、そうして閉めた。
「アレンいつの間にノアのところに繋げたんさ?」
「まったく記憶にないのですが」
「でもこの張り紙、兄さんの字でここって確かに書いてあるけど」
何度目になるか。顔を見合わせて、今度は三人でせーのっという掛け声と共にノブを回した。
そこにいたのはやっぱりノアで。ティキだけじゃなく、ロードもいた。
その額に聖痕はない。エクソシストも今日は普段着で、なんだかおかしな感じがする。
さっきの反応は酷くねぇか?とティキは軽口を叩いた。
「ま、混乱するのもわかるけど。エクソシストの室長からは何にも聞いてないのか?」
無言で3人は首を振る。
「警戒しなくていいよぉ。ボクらは今日話し合いに来たんだから。言うなれば外交官? お父様の方が得意そうだけどねぇ」
「あいつは逆に話をこじらせそうだ」
ティキとロードが笑いあう。そこでロードは猫のような目をアレンに向けた。
「久しぶりぃ、アレン」
含みのある言葉。ついこの間の邂逅は夢の出来事だと言うように。
だからアレンも微笑んだ。
「久しぶりですね、ロード」
中途半端ですがまだ続きます・・・!