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 突発。リンク→アレン(風味)です。
 CP要素ありのような気がしたので普段使わない追記機能を使ってみました。
 でもラブラブ要素なんてありませんよー。本当に。
 あとだらだらと続けたせいで最初と最後が違・・・・。


 それでも構わないよ、という心の広いお姉さまは追記よりどうぞ。




 そこにいるのにそこにはない。
 近くて、遠くて、なんとも妙な距離感。
 監査官とその監視対象。ただ、それだけの関係だったのに。

 どこで違えてしまったのだろう。

 リンクはまだどうにか冷静さを保つ思考でそんなことを考えた。
 その視線の先には、監視対象の少年が戸惑いに銀の瞳を揺らしている。
 沈黙だけが落ちていた。金色のゴーレムも息を潜めているのか羽音すら聞こえない。
「リンク、」
 先に口火を切ったのはアレンだった。
「その、どういうつもりですか」
 その言葉を合図にリンクがアレンの真白の髪に乗せた手をぱっとどかせば、アレンの目からはぽろっと音が聞こえるほど大粒の悲しみの余韻がひとつ、こらえきれずに落ちた。
 リンクはその光景を目にしながらおかしくなってしまった思考回路と闘っていた。
 ただの監視対象とその監査官。
 ただそれだけのはずなのに。リンクは信じられない衝動を押し殺していた。



 窓の外にはしんしんと、音も無く粉雪。
 冷え切った大気はじわじわと感覚を麻痺させていく。
 アレン・ウォーカーの様子がおかしい、と気付いたのはついこの間のことだ。
 どこかぼんやりとしている。以前は談話室やら食堂やら修練所など忙しく動き回っていたがこのごろ控えるようになった。ゴーレムと部屋にいることが多くなった、など。
 報告書に書くにはいまひとつ欠ける瑣末事。気のせいといえばそれまでだがリンクは嫌にはっきりと感じた。
 12月も半ばに入った。リンクはアレン・ウォーカーのデータを思い返した。
 12月。12月といえば彼の仮の誕生日が控えている。
 その日はマナ・ウォーカーに拾われた日なのだと、アレン本人が切なさと嬉しさを混ぜ合わせた笑みでリンクに話したこともあった。
 ノスタルジーに浸るのならそれでも良いと結論付けて、報告することもなかった。
 ところが。
 このごろ、凍える寒さから身を守るように毛布にすっぽりとくるまって眠るアレン。
 そのアレンがベッドの上で何度も寝返りを打つのを、離れたベッドで目を瞑っていたリンクはしっかり気付いていた。
 そのうちにうなされるものだから、ウォーカーと一言呼びかけた。
 目を開けたアレンは寝ぼけているようで、ぼんやりと空を見てわずかに口を動かした。
 マナ。
 声にならない声で呟いて、迷子のように瞳をさまよわせる姿は幼く見えて。
 気がつけば幼子にするように雪のような色をした頭を撫でていた。
 そのうちに覚醒したらしいアレンの夢の余波のせいか涙を湛えた銀の瞳が雄弁に信じられないと語っていて。
 リンクもらしくない自分に気がついて居心地の悪い思いを味わう。

 アレンがレベル4を破壊する代償に満身創痍となったときには、おぶってやった。
 けれどあくまで仕事だ。リンクはそう思っている。
 アレンにケーキやドーナツを作ってやったりもする。
 これはルベリエ直伝の菓子作りの腕前が落ちてしまわないためだ。
 他にも話をしたり、監視についてからは共に日々を過ごしている。
 けっして絆されてなんかいない。

「・・・・・びっくりしました」
 アレンが唐突に言った。
「あの、咎めたわけじゃないよ。ただリンクが慰めてくれると思わなくって」
 リンクってうすうすとは思ってたけどやっぱり優しいね。
 思わず違う、と否定の言葉が口をつきそうになる。
 けれどそれをしなかったのはリンクを優しいと言ってのけたアレンが少し照れくさそうにしながらも嬉しそうにしていたから。
 その銀灰の瞳にもう涙は無くて。リンクは、もう寝なさいとだけ言った。
「明日は朝から用事があると言っていたでしょう」
「そうだった。リナリーからクリスマスパーティの準備に誘われてた」
「クマでも作って私がリナリー・リーから責められては困る。ほら、電気を消しますよ」
「うん。・・・・・・・・ねぇリンク」
 パチンと軽い音をたてて暗闇が部屋を包む。
 リンクがアレンに向き合えば、アレンの白い髪も肌もぼんやりと浮かび上がり、その口が薄く弧を描いているのがわかった。
「           」
 紡がれた言葉は、リンクの耳には届かなかった。
 もともと聞かせるつもりも無かったのかもしれない。
 アレンは悪戯が成功した子供のようにクスクスと笑って、おやすみと笑った。
 すぐにすうすうと寝息が聞こえてくる。
 リンクは暗闇に溶けた言葉をしばし思案して、埒があかないとベッドに腰掛けた。
 スプリングが、ギ、とだけ鳴る。
 油断すれば囚われてしまいそうだ。
 暗闇の中ですらその存在を主張する白に。魅入られてしまいそうになる。
 あのとき、本当はこの腕に閉じ込めてしまいたかったのだ。
 まだ少年が養父に囚われているのなら、そうして彼の世界に入り込みたかった。
 実際は身にまとう儚げな色と裏腹に、彼がとても強靭であると知っていながらも。

 そこでリンクは思考を中断した。
 眠るアレンは平和そうな寝息をたてている。もう悪夢は見ていないようだ。
 それならいい、とリンクはわずかに苦笑した。
 そろそろ私も寝なくては。明日は早いのだから。
 アレンとは別に、リンクもリナリーから頼まれごとをしていた。
 クリスマスパーティーと平行して、気づかれないようにささやかな誕生日パーティーの準備。
 つくづく彼女らはウォーカーに甘い。
 そうして自分もまた彼に惹きつけられてゆくのを感じながら、リンクも心地よい眠りについた。



* * * * *
 アレンの言った空白のセリフは、実際に入れたらアレンさん!?と私とリンクが固まったために空白でマイルドに。(笑)
 誕生日当日話は日付が過ぎてしまったから流そうかな、と。(目をそらしながら)
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