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(ティーンズで学パロ)
(設定上アレンとリナリーは1年生、神田とラビは3年生)



 昔からどういうわけか僕らは一緒にいた。
 性格はてんでばらばら。なのに遊ぶのも、ケンカするのも、いたずらするのも、怒られるのもたいていは4人で。仲が良すぎるのも困りものだよ、なんて言われた。
 それでもどうしても埋められないものがあって。その一つが歳の差だったりする。
 たった2つ、されど2つの差を強く意識させるこのイベントを、僕はまだ好きになれない。
 あいにくの曇天の空を見上げる。
 淡い色をした桜の蕾もまだ眠りの中にいるようだ。


「―――益々のご活躍を願って送辞の言葉とさせていただきます。在校生代表リナリー・リー」
 リナリーの澄んだ声がマイクを通して体育館の中に静かに響き渡る。
 卒業式というものを当然これまで何度も経験しているのだけど、正直に言うと送り出す側は慣れない。どこかのお偉いさんたちの長い長い言葉は卒業する彼らに当てられたもので、つい船を漕ぎ出してしまうのも仕方がないとつくづく思う。
 一礼して威風堂々と壇上を降りるリナリーと目が合った。良かったよ。言葉に出さずに微かに微笑むことで伝える。綺麗な笑みが返ってきた。
 続いて壇上に上がるのは僕の幼馴染――というよりも腐れ縁のほうがしっくりくる――の一人。
 リナリーのときには伸ばしていた背筋の力を抜く。こうして視線を下ろせば彼の姿は見えない。
 聞きたくない、と思ってしまった。
 どうしても埋まらない歳の差は、時折こうして別離を意味するものとして姿を現す。一緒にいたのに、どんどん先へ行ってしまう。憎たらしいことはやっと追いついたと思ったらまたすぐにその背中が先へと行ってしまうことだ。
 でも、僕がつまらない維持を張っても時間の流れが変わらないことくらいはちゃんとわかっている。
 背筋を伸ばし、最後の晴れ姿を目に焼き付ける。そうして後で笑い飛ばすんだ。老けましたね、って。
 どこかで誰かが鼻をすする。引きづられてツンと痛くなった目頭をどうにかしてやり過ごそうかと考えているうちに式は終わった。


 いっそ同い年だったらよかったんだ、僕ら。4人そろって。そしたら誰も置いていかれる感覚なんて味わうことはなかった。
 僕らはみんな対等なのに、世間は時の流れに従って僕らを別けようとする。それが初めて置いていかれたあの日からずっと嫌なんだ。
「寒いね。神田たち、まだかな」
「ホームルームとか長引いてるんでしょ。それにクラスのみんなとも今日で最後だし、積もる話もあるだろうし」
「そうだね・・・」
 ふと、リナリーの顔を見ると鼻の頭が赤い。それは寒いからか、それとも。
 まだしばらくかかりそうだし、どこか行こう。そう提案したら二つ返事で了承してくれた。
 リナリーの赤くなった小さな鼻を見たら、唐突に聞きたくなったんだ。そして、できれば共有してほしかった。幼いころから一緒にいた幼馴染に。凛とした態度で送辞の言葉を送った在校生代表に。
 感傷に浸って、悔しく思って、寂しくなるこのやっかいな感情を、肯定してほしかった。

 迷った末に行ったのは学校から近くにあるファミレス。値段のわりにボリュームがあって、学生に人気がある店だ。もちろん何度も4人で来たことがある。
 ラビにはファミレスにいるとメールを送っておいた。この場合、神田に連絡するのは適切でない。神田は学校にいる間は律儀に携帯の電源を落としているし、学校から出てもなかなか電源を入れないのだ。それでもリナリーは一応神田にも送っておくね、と薄いピンクのかわいらしい携帯を取り出した。白いペアストラップが揺れる。

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